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GREATER THAN EVER ! : DEEP INSIDE JAILHOUSE ROCK SESSIONS (2008年夏版)
映画「監獄ロック」には、「X1〜X10」として10種類のサントラ曲が準備されて、7曲が使用されました。
これら1曲1曲には、バージョン違いが存在し、今回じっくり調べてみると研究書籍「A LIFE IN MUSIC」や「ELVIS SESSIONS V」の解説にも疑問点があることが判りました。
未発表テイクが発表される度に書き換えを余儀なくされる「エルヴィス考古学」は、常に「Young And Beautiful」状態で臆測の域を出ませんが、「GREATER THAN EVER!:DEEP INSIDE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」を「2006年2008年夏版の分析」としてお楽しみ下さい。
(「FS:ファルス・スタート」と「LFS:ロング・ファルス・スタート」の記述は、可能な限り「TAPE LEGEND」に
従いましたが、データの見つからなかったテイクについては、私が判断した部分がありますことをお断りしておきます。)
レコーディング・セッションとマスターテイク選定の記録
【考察の軸】
2006年版考察の軸は、海賊盤「The Jailhouse Rock Sessions (JRS)」の音源が、
1957年8月22日にMGMからRCAに渡された(届かなかった?)テープだったことでした。
2008年版考察は、さらにもうひとつの軸となる
CD「ESSENTIAL ELVIS (EE)」の音源が、1957年6月14日にRCAがファイリングする際に受け取っていたテープだったこと
を加えてまとめてあります。使用する波形解析ソフトの精度が上がったので、軸が増えたのです。
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(このセッションの複雑さを象徴する)海賊盤「THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」の解説
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Thorne Nogar技師が保有していたテープ
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THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS
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A-1.Don't Leave Me Now
A-2.Treat Me Nice
A-3.Young And Beautiful
A-4.Jailhouse Rock
A-5.Baby, I Don't Care
A-6.I Want To Be Free
B-1.Don't Leave Me Now
B-2.Young And Beautiful
B-3.Jailhouse Rock
B-4.Old Shep
B-5.I Beg Of You
B-6.Your Cheatin' Heart
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海賊盤「THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」は、ラジオ・レコーダーズでエンジニアを務めたThorne Nogar技師が手元に残したテープを音源として作成されました。「MGM サウンド・ステージ」でエンジニアを務めたのは、Fred Mulculpinなる別の人物なので、「MGM サウンド・ステージ」でボーカル・オーバーダブされた「Baby, I Don't Care」がこのテープには入っておらず、「オケなら有るよ」とコメントされていることや、「MGM」を「they」と呼んでいることからも、このテープを作成したのがThorne Nogar技師であることは間違いなさそうです。
「監獄ロック・セッション」分析の入門編として、同盤の収録バージョンについて説明しておきます。
A-1.Don't Leave Me Now (2017-18)
FTD「SILVER SCREEN STEREO」で発表された「2017-18」と同じものです。
A-2.Treat Me Nice (2008-sp)
テープ・レジェンドには「2008-10**」と書かれていますが、
1957年6月14日に既にRCAでファイリングされたレコード・マスターと同じ「2008-sp(10&13)」が入っていました。
「**」が付けられた理由を、既に渡されたバージョンと同じものを意味しているとか、
「10**」が、編集された「テイク10」を意味しているのか等に考えましたが、
その他の曲では「Jailhouse Rock (2001-6**)」だけにしか見られませんので、「**」の意味は依然として分かっていません。
A-3.Young And Beautiful (2004-19)
テープ・レジェンドには3テイク(18,19,22)が記されていますが、テイク22はRCAマスターと同じテイクですので
海賊盤であえて発表する理由は無く、この「A-3」はテイク18かテイク19のどちらかになります。
このトラックでは、エンディング近くで「never set me free」の歌詞が「kiss me tenderly」と間違って歌われていますので
このトラックがMGMの「Daily Music Report」に「NG」と記されたテイク18であろうと私は長年信じていましたが
テイク18がフィルム・マスターの編集に使われたと知り、音声解析をしてみたところテイク18らしき部分が見つからず、
現在はこのトラックをテイク19であると考えるようになりました。
A-4.Jailhouse Rock (2001-6**)
レコード・マスターと同じテイク6ですが、フェイドアウトのタイミングが遅く、長めのトラックとなっています。
A-5.Baby, I Don't Care
テープ・レジェンドには見られない「Baby, I Don't Care」は、映画の音声をそのまま抜き出したものが入っています。
A-6.I Want To Be Free (2010-11)
オリジナルEPで発表されたものは、エンディングを編集したテイク11でしたが、
このトラックは4CDs「CLOSE UP」で発表された未編集テイク11と同じでした。
BMGのヨルゲンセン氏は「未編集テイク11」がオリジナルEPで発表され、編集テイクが4CDs「CLOSE UP」で発表されたと、
私とは全く反対の判断をしています。
B-1.Don't Leave Me Now (2017-21)
4CDs「CLOSE UP」で発表されているのと同じ「2017-21」です。
B-2.Young And Beautiful (2004-18 未編集)
海賊盤「THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」の分析で最も悩まされたトラックです。
結論から言えばこのトラックは、テープ・レジェンドに書かれたテイク18なのですが・・・
テープ・レジェンドに 「ON 2004 they used TAKE 18 which is a combination of 18 & 12 〜」と書かれていて、
「未編集のTAKE 18」と「編集されたTAKE 18」が両方とも「TAKE 18」と呼ばれていますし、
海賊盤「THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」のジャケットに、このトラックが
「Composed of two different takes (nrs.8 and 12), with some sentences added from three additional take」と
説明されていますので、私はこのトラックを「テイク18と呼ばれた編集マスター(劇中で使用)」だと思い込みました。
音声解析ソフトで調べてみたら、編集マスターでもなく、オリジナルEPで発表されたテイク22でもなかったので、
このトラックはテイク18に落ち着いたのですが、編集マスターはテープ・レジェンドに書かれている「編集されたTAKE 18」ではなくて
「ESSENTIAL ELVIS」で発表されたように、「編集されたテイク12」としてRCAに渡されていたようなのです。
(詳細は YOUNG AND BEAUTIFUL のページで)
B-3.Jailhouse Rock (2001-5)
「ESSENTIAL ELVIS」で発表されたテイク5です。(「ESSENTIAL ELVIS」の解説はまたいずれ)
B-4.Old Shep
「監獄ロック」関連ではありません。その当時珍しかった「別マスター」のテイク5です。(正式マスターはテイク1)
B-5.I Beg Of You
「監獄ロック」関連ではありません。その当時珍しかった1957年1月13日録音の「没マスター・テイク12 (H2WB 0259)」です。
1957年2月23日録音の正式マスター(テイク34)を意識したかのようにアセテート盤の回転数を落としていますので
聴けたもんじゃありま・・・いや、エンディングで拍手らしき音が聞こえるのがちょっと気になるのです。
B-6.Your Cheatin' Heart
「監獄ロック」関連ではありません。その当時珍しかったテイク9です。
海賊盤LP「THE JAILHOUSE ROCK SESSIONS」の「1st edition」 は、内容が異なっていたという情報もありますが、今回はこれまで。
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Thorne Nogar技師が保有していたテープのテープレジェンド
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【余分な話】
映画「監獄ロック」には、音声が付けられていないものの舞台に立っている場面(↓)が撮影されています。
撮影時には何も歌ってはいなかったのでしょうか?
気になるけど、全く情報が掴めていませんので、今後の課題のひとつになりました。
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